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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
その意味で、パリが芸術の都であるというのは、事実だった。
「でもね、パリの人たちは、何に向って表現しているのかしら――大戦からこっち。ねえ。あんな激しい表現の行くさきは、どこなんでしょう」
磯崎夫妻につれられて行った画商の店にあったドランの、壁いっぱいの大さの、赤松林の風景の印象が、ベレーをかぶった額に青葉かげをうつしながら歩いている伸子の心を横切った。つづいて、別の壁にかかっていたキリコの石膏色の円柱の折れたかたまりと非現実な馬と、人間が。マチスとピカソの年と云われて、伸子たちが歩いた二三軒の画商には、マチスの、溶けるように甘美な調和と休憩の諧調にあふれる作品と、ピカソの奇異なコンポジションが陳列されていた。それらの画商のドアを押してはいり、そのとっつきから陳列されている絵の前に立つごとに、伸子は、鋼鉄のようにつよく容赦なく互の独自性を主張して存在しようとしている個性のそばだちを感じた。これらの画家たちは何と強烈に意欲的に、自分の破壊とくみたてを行っていることだろう。それぞれに嶄新な創造を発見しようとして、そのためには野蛮であろうとし、過去の伝統から身をふりもぎって追求しようとしている。