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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
だけれども、同じ平面のこっちで洗濯をしている少女たちの視線は、せまく石塀によってかぎられているし、孤児院の方の窓々からそのおもしろい内庭も見えないらしかった。塀のそちら側にプラタナスがしげっていて、緑の小屋はその蔭によっているから。
こういうパリの片隅にある生活の情景は伸子の心をつよくとらえた。塀の灰色、こってりとしたプラタナスの緑の枝。そこに色調があり、緑色に塗られた小屋や黄色いカーテンや淋しそうな孤児院とその少女の姿に絵がある。パリへ来ると、どんな画家でもその人の一生にとって何か絵らしい絵を描く、そうさせる刺戟の半面がこあじな気分や調子に満ちている。しかし伸子は灰色と緑に、その淋しさをもって調和しているような少女たちの姿を見ると、そういういわゆるフランスらしい調和を突破して溌溂と生活そのもので生きているモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の野営地の少年少女を思わずにいられないのだった。彼らは洗濯する。彼らはジャガイモの皮むきをする。食器洗いをする。つくろいものもする。きまった時間に学習し、水浴し、遊びして暮している。野営地には、親のない子供たちの「子供の家」