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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

西瓜船に人がのっていることもあり、西瓜ばかりのこともある。舳に白波を立てて広い流れをさかのぼって来る遊覧船には人が満載だった。甲板の手摺りに鈴なりになって、こっちの船をみている白い開襟シャツ、黒と黄色の横ダンダラの運動シャツなど一人一人の姿が手にとるように見える間隔で二つの船はすれちがった。下から来る船の乗客にはコーカサスやウクライナの「休の家」から一ヵ月ぶりでモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ帰ろうとするひとが多いらしくて、すれちがうとき伸子たちの船に向って、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)のなつかしさをこめて歓声をあげるのは、うしろに西瓜船をひっぱっているその船の方だった。同じように午後のうちにすれちがう上りの船でも、吃水を深くしずめて円塔形の上部ばかりを水面にあらわした石油船であると、それを眺めている伸子たちの船の甲板には一種の尊敬の感じが流れた。石油と白くかかれている特殊な輸送船が川波の間をさかのぼってゆくのをみると伸子にしろソヴェトの生産計画の生きた姿を感じずにいないのだった。

ロシアで西瓜はドゥウィニヤとよばれているけれど、それは日本の西瓜のとおりなかみの赤い、種の黒い西瓜だった。