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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

磯崎恭介の子供の骨は、その納骨都市のずっとはずれの、ほとんど天井にすれすれの一区切りの中にしまわれた。2568という番地だった。黒衣の男は、脚立を片づけて、ちょっと黙祷すると、みんなをあとにのこして去った。磯崎恭介、須美子、伸子と素子。四人は一列に立って首をあおむけ、小さい子の骨のしまわれた高い高い場所を見上げた。恭介が、かすかな辛辣さで、

「これなら、順坊も昇天うたがいなしでいいや」

と云った。

伸子は小さい声で素子に、

「花を買ってくればよかった」

とささやいた。パリの、ヴォージラール街のホテルの七階の屋根裏部屋にいた伸子は理解したのだった。磯崎の子供も、この納骨都市のアパルトマンでは、やっぱり七階にいるようになったのだと。

伸子と素子とは、磯崎夫婦を送ってデュトの家へよった。そのタクシーでホテルまで帰って来た。帳場で、室の鍵といっしょに、一枚の紙きれをうけとった。ちらりと電話番号の書かれてあるのだけを見て、伸子と素子とは、ノートの紙切れをもったまま、室へあがって来てしまった。

パリで、雨の日に、淋しい子供の葬式につらなることが起ろうとは、伸子も素子も思っていなかった。