轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「ようござんす。わかりました。(ハラショ パニャートノ)」
女主人はこの前マリア・グレゴーリエヴナや素子と一緒にはじめて部屋を見に来たときの気取りいっぱいの調子とは別人のような素気ない早口で、役所でよくつかうようなふたことの返事をした。そして、ちょっとだまりこんでいたが、かすかに捲毛の頭をふり、自分で自分の気をひき立てでもするように、
「ニーチェヴォ」
と云った。
「わたしは、またあなたがたを、外交団関係の方たちだと思ったんです」
なぜそう思ったんだろう。そう考えながらだまっていくらか仰向きかげんに向いあって立っている伸子の顔に、捲毛の女主人は瞬間全く別なことを考えている視線をおとした。が、やがてすぐ気がついたように、
「じゃあ、さようなら」
伸子に向って手を出した。
「さようなら」
入口をしめて雪の往来に出たとき、伸子は、やっぱりこのひとも、心の底では本当に部屋をかしたかったのだと、あわれな気がした。舞台の上にいるように、扮装だらけのいろんな表情で日々を送りながら、真実には不安があるのだ。伸子に向って云うというより自分に向って云ったような女主人のニーチェヴォの調子を思いかえしながら、伸子はモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)夕刊社へ行く方角に歩いた。