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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

伸子は、子供のときから、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来てニキーチナ夫人と一緒にうつした写真まで、無数と云うぐらいどっさり写真をとられた。それは生後百日記念、佐々伸子、と父の字で裏がきされている赤坊の伸子の第一撮影からはじまった。そこには、ゴム乳首をくわえている幼い総領娘の手をひいた佐々泰造の若いときの姿があり、被布をきた祖母が居り、弟たち、母がいた。ニューヨークで佃と結婚したとき、伸子はその記念のためにとった写真の一つを思い出した。平凡に並んでうつしたほかに、伸子は自分のこのみで、佃と自分の顔をよせ、横から二人の輪廓を記念メダルの構想で写してもらった。佃の彫りの深い横顔を大きくあらわして、その輪廓に添えて、二十一歳の軟かく燃える伸子の顔の線をあらわすようにした。六年たって、佃と離婚したあと、伸子はその写真を見るに堪えなかった。写真がそんなに佃と自分との結合を記念して、消えないのが堪えがたかった。書いた日記を破ったりしたことがないほど生活をいとしむ伸子であったが、そのメダル風の写真は、台紙からはがしてストーヴの火のなかに入れた。伸子は写真ぎらいになっていた。