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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
六
「あの人たちは、よその家の敷布もどっさり盗まれているのを見つけたんです――御覧なさい! あの人たちはいつもあとから分るんです」
うれしくて仕方のない感情を、ほかの仕草であらわすすべを知らないニューラは、いそいで廊下を先に立って行って、伸子と素子とのための二人の室のドアをあけた。
六
メーデイの日のために、伸子たちは対外文化連絡協会から、赤い広場への入場券をもらった。
その朝はうす曇の天候で、気温もひくかった。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の街々では電車もバスもとまった。辻馬車の影もないがらんとした通りを、赤い広場へむかって、人々がまばらにいそいで行く。行進をする幾十万という人々は、みんなそれぞれの勤め先から旗やプラカートをもってくり出して来るから、ばらばらに赤い広場の方へ歩いているものはごく少数で、しかも何かの事情で行進には参加しない連中らしく見うけられる。伸子と素子も、そのばらばらの通行人にまじって、中央美術館前の大通りを、アストージェンカから真直に赤い広場へ歩いて行った。
うすら寒いような五月一日の天気にかかわらず、歩道をゆく人々は、今朝はすっかり夏仕度だった。