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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
と云った。アンナ・シーモヴァはうれしそうにそう云って頬が微笑で輝いた。
「わたしに、三つの娘がいるんです」
つづけて、アンナ・シーモヴァが柔かい低い声で云った。
「わたしの夫は、集団農場の組織のために地方へ行っていますが、彼も一週間たつと休暇になります」
アンナ・シーモヴァが、
「わたしたちは、三人で暮すんです。少くとも一ヵ月――」
と云ったとき、伸子は思わず、
「おめでとう!」
そう云って、アンナ・シーモヴァを抱擁しそうに手をひろげた。アンナ・シーモヴァの幸福感はそれほど新鮮で、伸子をうち、感染させた。三つの娘がいるんですよ。わたしの夫は地方から休暇をとって来ます。わたしも講習会が終ったら休暇になります。そして、わたしたちは三人で暮すんです。歌のような活動のリズムと勁い生活の歓喜がそこにあった。
もうスモーリヌィへ行かなくなってから、伸子は一層しばしばアンナ・シーモヴァを思いおこした。あの、歌の繰返しのようだったよろこびの囁きと一緒に。――わたしたちは三人で暮すんです、少くとも一ヵ月。そこには、一ヵ月一緒に暮すことさえ珍しくうれしいほどの活動の響きがうらづけられていた。