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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
が偲ばれた。
動坂の家のひとたちは、伸子と保とがどんなに一枚の楯の裏と表のようなこころの繋りをもって生きていたものであったかということについて、考えてみようともしていないであろう。或は多計代だけは考えているかもしれない。伸子のような姉がいるから、保はなお更思いつめずにはいられなかったのだ、と。誰か人があって、伸子に向い、同じことを言ってなじったとしたら、伸子はひとこともそれについて弁明しようと思わなかった。たしかにそれも事実の一つであろう。だけれども、それだけが現実のすべてだろうか。伸子が保に影響したというよりも、伸子は伸子らしく、それに対して保は保らしく反応せずにいられない今という時代の激しい動きがあるのだ。たとえば三・一五とよばれる事件で大学生が多数検挙されている。生れながらの調停派とあだ名されながらその恥辱の意味さえ彼の実感にはのみこめないような保が、保なりに、保流に、それについていろいろ考えなかったとどうして言えよう。保は、その一つのことについてさえも彼らしく各種の矛盾を発見し、そこに絶対の正しさをとらえられない自分を感じたことであろう。