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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
やっと同じ棟の三階に一部屋できたこと、四十分たったら荷物をはこぶために門番が来ることを通告して、ちょいと寝室へ入ってゆき、ドアの間へ外套の裾をはさみこみそうにあわただしくまた出て行った。伸子たちはアニュータに心づけをやり、太って息ぎれのする門番について三階の新しい室へおりて行った。
いかにも醇朴な若くないロシア女の眼をもった主婦の顔を見て、まず伸子がふかい安心と信頼を感じた。そのルケアーノフ一家はソコーリスキーの家庭と比較にならないほど質朴で、住んでいる人に虚飾がないように調度も余計なものはなに一つなかった。
伸子たちのための部屋というのは、しかしながらひどい部屋だった。この建物には、どこへ行っても一部屋はそういう室があるらしい狭い小部屋が、ルケアーノフのクワルティーラでは、建物の内庭に面して作られていた。暗い外ではしきりなしに雪の降っている内庭に面して一つの窓が開いているばかりで、寝台が一つ、デスクが一つ、入口のドアのよこにたっている衣裳箪笥で、きわめて狭いその部屋はもういっぱいだった。
ソコーリスキーが苦しまぎれに、こんな部屋でも無理に約束したことは明白だった。