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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

の月給がとれる出さきの役人や顧問技師の満足であるわけだった。

ソヴェトの生活になじむにつれて、伸子は、ソヴェトに対するよその国々の偏見と、それをこけおどしに宣伝する態度にいとわしさを感じていた。いってみれば、その偏見そのものが通過の上にあらわされている換算率で、自分たちのルーブルがふえるというのは何という皮肉だろう。

金についての素子のつましさは、働くもののつましさではない。むしろ、常にいくらかゆとりのある金を用心ぶかくねうちよくつかってゆく小市民的な習慣だ、と伸子は思った。けれども、それならば、伸子自身が素子とはちがった面で小市民的でないと云えただろうか。一度か二度ピオニェールの野営地を訪問し、クラブでピオニェールたちと会談したくらいのことで、ピオニェールのことは心得たようにあの金毛のピオニェール小僧に対した伸子は、自分の態度に甘さのあったことをかえりみずにいられなかった。ピオニェールのネクタイしか赤いきれがモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)にないとでもいうように! モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ぐらい、どこへ行ったって雑作なく赤い布きれが手に入るところはありはしないのに! 悪意は辛辣でリアリスティックだと伸子は思わないわけにゆかなかった。