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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
が、伸子は、組合の保健婦であるそこの細君に案内されて部屋をみたとき、素子がどうしてもそこに、おちついていられないんだ、といくぶんきまりわるそうに云ったわけがわかるようだった。
三方の真白い壁と、カーテンのかかっていない二つの大窓に面して、ひろくむき出された床の上には、ぽつねんと古びた衣裳箪笥が一つたっていた。ニスの光る新品のデスクが一つ窓に向って据えてあった。ドアの左手の窓ぎわにくっつけて、寝台がわりにディヴァンがおかれている。部屋を見わたして、伸子は、
「大変清潔です」
と云いながら、ひどく不思議な気持がした。その部屋は全く清潔でなくなろうとするにも、それだけのものがないのだったが、この室におかれているものは、デスクにしろディヴァンにしろ、どうしてこうも小型のものばっかり揃っているのだろう。デスクは、室の広さとのつり合いでおちつきようもなく小さくて真新しいし、ディヴァンにしろ、それがそこにあるためにかえって室内のがらんとした感じが目立つぎごちない新しさと小ささだった。伸子がモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の家具として見なれた大きさをもっているのは、衣裳箪笥だけだった。