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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「ね、なんなの」
とせきたてた。
「こういう電報が、けさ来た」
渡されたローマ綴りの日本語の電文をよんで、伸子は、
「まあ」
ほとんど、あっけにとられ、信じられないという風に素子を見あげた。そして、もう一ぺんたしかめるように一字一字をよんだ。「マダタイインセヌカ、ワイチローケツコン三カツ一四ヒ。イツカ五カツ二三ヒコウベハツ、七カツ一ヒマルセーユチヤク」まだ退院せぬか。それはすらりと伸子にのみこめた。和一郎結婚三月十四日も唐突ながらわかった。五月二十三日神戸発、七月一日にマルセーユに着というのもわかるけれども、一家というのは――。
「どういうんでしょう」
一家という言葉にあらわされている父と母、弟とその妻となるおそらくは小枝、妹のつや子という佐々一家の人々を、七月一日にマルセーユに着く顔ぶれとして想像することは、日頃の一家のくらしぶりを知っている伸子にとってあんまり予想外だった。伸子は、しばらく黙りこんで電報をながめていた。やがてうなるように、
「どういうつもりなんだろう」
とつぶやいた。多計代の健康がよくなくて、一日に何度も神経性の下痢がおこること、糖尿病から視力に障害のおこっていることなどを、保が亡くなってからの手紙には、絶えず訴えられていた。