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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
焦点のぼやけたその表情と、むっつりしてあんまりものも云わないところをみれば、素子も特別気が晴れていないのだ。ゆうべホテルの食堂でモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)馴れした自分の目をみはらせたワルシャワのパンの白さ。それが、象徴的に伸子に思い浮んだ。パンはあんなに白い。――パンのその白さを反対の暗さの方から伸子に思い出させるようなものがワルシャワの生活とその市街の瞥見のうちにあった。メーデーさえ何だか底なしのどこかへ吸いこまれてしまって、しかも、それについては、知っているものしか知っていてはいけないとでもいうような。ワルシャワの街そのものが秘密をもっているような感じだった。
折から、伸子たちをのせた馬車が、とある四辻のこぢんまりした広場めいた場所にさしかかった。その辺一帯の公園住宅地のそこに、また改めて装飾的な円形小花園をつくり、伸子たちの乗っている馬車の上からその中央に置かれている大きい大理石の塊の側面が見えた。大理石の塊から誰かの記念像が彫り出されている。記念像は下町に向ってなだらかにのびている大通りにその正面を向けて建てられているのだった。