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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)を立ってワルシャワへいったとき、伸子は、雰囲気的にポーランドのソヴェトぎらいを感じとった。一晩しかいなかったワルシャワでは一つの匂いのように伸子の顔の上に感じられた反ソヴェトの感情が、ウィーンへ来ると音楽についての公使夫人の話しかた、附武官のパン・オイロープへの肩のいれかた、黒川隆三の老成ぶったソヴェト批評と、どれもつながりをもち、一定の方向をとっている。その国の言葉が話せないということで、自分と全く種類のちがう同国人にまじってすごす不自然さについて伸子はまじめな感情にされた。あながち伸子自身がどうという政治的な立場をきめているのではないけれども、ソヴェトの現実を知っているものの心持としておのずから彼等と反対におかれるような場合、ウィーンでの伸子は、沈黙してしまうことが少くなかった。ここと、ここにいる人々と自分とのつながりは一時のものにすぎないということから、いつの間にかそういう伸子の態度がでていた。伸子とすれば、もしあしたになれば、ふたたびみることのないこの丘の斜面の風景であるにしろ、いま遠いところにあるどこかの建物の窓々が午後のある時間の日光をある角度から受けるとあんなに燃えるという事実は、伸子がそれを眺めようが眺めまいが、その事実独自の全さで存在しつづける