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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「じゃ、つまりこう?」
伸子は黒川隆三にききかえした。
「あなたの考えでは労働者は労働者として、インテリゲンツィアはインテリゲンツィアとして、資本家は資本家として、その区別をいまのままこういう工合でもちながら、よりよく発展して行くべきだっていうわけ?」
こういう工合というとき、伸子は、労働者、インテリゲンツィア、資本家という順に上へ上へとつみあげる手つきをした。
「いいや、社会主義の中では、知識が金の上にくるべきなんです。インテリゲンツィアがその文化力で、資本を支配してゆくべきなんです」
「だって――それじゃ、オーエンだわ」
伸子が、おどろいた眼で黒川を見つめた。
「そう云われるだろうと実は、はじめっから思っていたんです。失礼ながら、あなたがたは、ボルシェビキの理論しか御存じないから……」
黒川隆三はパッと音をさせてマッチをすり、改めて素子のタバコにも火をつけてやりながら、
「ボルシェビキの理論にしたがって、革命になったら、一つ佐々伸子さんがプロレタリアの側に移ったところを見せていただきましょうか」
それは伸子の心に、彼に対して憎悪をわかせる云いかただった。