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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
彼の話をきいていると、トラストやコンツェルンというものは、ドイツの軍国主義から発明されて、ドイツにしかないものであるかのような錯覚があった。石炭液化とか人絹工業のように。でも、伸子がよんだり聞いたりしてもっている知識や実例のどこをさがしても、トラストは、資本主義の経済のしくみそのものからおし出されて来る資本集中の過程だった。そうでないなら、どうして、こんにちのヨーロッパの経済を動かしているものは僅か三四百人の実業家であると云われているのだろう。三四百人の軍人であるとは云われないで。――
産業合理化はドイツの国内に進んでいるばかりでなく、製鋼その他は国際カルテルにまでひろがっているということを、津山進治郎は「新興ドイツ」の制覇として話すのだった。おそろしく素朴で、しかも自分の云っていることにゆるがない確信をもっている津山の話しぶりは、世界経済についてよく知らない伸子をも、ますます深くおどろかした。
「じゃあ、津山さんも、またああいう戦争がおこった方がいいと思っていらっしゃるの?」
「――いいというわけはないが、どうみたってドイツとして、このままじゃすまんでしょう」