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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
三・一五の事件があってから、ひろくもない日本のなかで、革命的な大衆は、弾圧の二十四時間の中で生きなければならなくなっているのだから。その余波は、形こそかわっているがモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の伸子の生活にまで及んだ。
けれども――それにしても、と、伸子の心はこれらの小説についての疑問をいだいた。そこではすべての小説が叫びのようだった。これらの小説には何とたくさんのエキスクラメーション・マークがあるだろう。そして、小説の世界は、その小説を書いている人たちが階級的な亢奮で力を入れてこわばらしている肉体そのもののように、主題を主張し、こわばって、封鎖されている感じがした。読むものが、そのときどきの心のまま、ひとりでにその小説の世界へはいって、いつかそこに表現されている世界にとけ入るような戸口がついていないように、伸子には息づまって感じられるのだった。
無産派の小説は伸子がまだ日本にいたころにあらわれはじめた。「セメント樽の中の手紙」「施療室にて」「三等船客」そんな小説があった。それらはそういう人々の生活と文学とから遠く暮している伸子にも感銘を与える強烈なものがあった。