轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

道標 第三部

第一章

一

五月二十日ごろ佐々の一家をのせて神戸を出帆した日本郵便株式会社のカトリ丸は七月一日の午前九時ごろにマルセーユへ入港する予定だった。マルセーユの駅からホテル・ノアイユへよって、パリの日本大使館のムシュウ・マスナガが契約しておいた部屋と云って一応たしかめておいてから、埠頭へ迎えに行けばよいだろう。増永修三が、マルセーユ行の切符とともに伸子に与えた指図は、そういうことであった。

六月三十日の夜七時に、伸子は一人で、ガール・ド・リオンから出発した。どんなあい客が、いつどこからのって来るか予想されない車室のなかに、さし向いでとじこめられる一等車をさけて、伸子の乗ったのは、日本の汽車のような体裁の二等車だった。

車内は、八分どおりのこみかたで、伸子は二人ならびの席にひとりでかけられた。伸子は、ウィーンで買ったクリーム色の小さい手提鞄を用心ぶかく自分の体と窓の間におき、言葉のよく通じない外国で一人旅する若い女の身のひきしめかたで、座席がきまるとすぐ窓外の景色を眺めはじめた。

南仏に向う列車の沿線には、夏の薄明りにつつまれておだやかに耕地がひろがった。耕地はゆたかに隅々まで愛情をもって耕作されている。