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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
厚かましいやりかたにはちがいないけれど、いちいち、それを気にしていちゃ、御自分が愉快になるひまがなくなってしまう」
「伸ちゃんは、あいかわらずだ」
まるで、一年半わかれていても、そういう伸子を見出すのを待って来たとでもいうように、多計代は先入観でかたまった声を出した。
「伸ちゃんがエゴイストだってことはわかっていますよ」
苦笑してだまっているために、伸子は努力した。そして心のなかに思うのだった。四十日も、船のなかでごちゃごちゃして来たのがわるいのだ。みんなが少し、神経をどうかしている。早くパリへ行くことだ。そしてそれぞれに気をちらすことだ、と。
伸子はつや子をつれて別に部屋をとり、そちらで眠るつもりだった。けれども、多計代の主張で、夫婦の寝室にもう一台寝台がはいり、伸子もそこへ泊ることになった。
日本浴衣のねまきに着換えた多計代は、煖炉棚の上においてある錦のつつみものに向って、よく響くかしわでを二つうちならした。それから、寝台にはいった。伸子は、気まずい思いでその儀式の終るのを待って、多計代のわきへ横になった。母のもう片方の側には、つや子がくっついた。