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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
和一郎は、憤懣にたえない若い男の口元の表情で、むきだしにそのいきさつを姉に説明した。
「小枝を小間使いにするためだってことがはじめっからわかれば、僕、決して、あのとき結婚するなんて云い出しゃしなかったんだ。のばして平気だったんだ――その点、僕、小枝にほんとにすまないことをしたと思っている」
ホテルの小部屋で、寝台に並んでかけて話している和一郎のわきで、彼がそういうのをきくと小枝はさっと顔をあからめて涙ぐんだ。そして、何か云おうとしたが、やめた。
結婚式についても、いずれ外国から帰ってのち改めて、ということで至極手軽にすまされたし、花嫁の結婚支度も、双方の親の話しあいで予算の三分の二はこんどの旅行の費用として、現金で泰造にわたされたということだった。
「――それで、それだけのお金は、あなたがたが持っているの?」
伸子は、自然そういうことまで訊かないわけにいかなくなった。
「それが、そうじゃないんだ。一緒くたになってしまっているんだ。僕たち二人なら、出るたんびにタクシーにのるわけじゃないし、一流のレストランへ行きたいわけじゃないし、倹約に、能率的に、若いものらしくつかえるんだ。