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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

四

をとばして登った。

四

その年の正月早々、藤堂駿平がモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来た。これは、伸子たちにとっても一つの思いがけない出来事だった。三ヵ月ばかり前、旅券の裏書のことで、伸子が父の泰造と藤堂駿平を訪ねたときには、そんなけぶりもなかった。藤堂駿平の今度の旅行も表面は個人の資格で、日ソ親善を目的としていた。ソヴェト側では、大規模に歓迎の夕べを準備した。その報道が新聞に出たとき、秋山宇一は、

「到頭来ましたかねえ」

と感慨ふかげな面もちであった。

「この政治家の政治論は妙なものでしてね、よくきいてみればブルジョア政治家らしく手前勝手なものだし、近代的でもないんですが、日本の既成政治家の中では少くとも何か新しいものを理解しようとするひろさだけはあるんですね。ソヴェトは若い国で、新しい文化をつくる活力をもっている。だから日本は提携しなければならない。――そういったところなんです」

そして、彼はちょっと考えこんでいたが、

「いまの政府がこの人を出してよこした裏には満蒙の問題もあるんでしょうね」

と云った。

こっちへ来るについて旅券のことで世話になったこともあり、伸子は藤堂駿平のとまっているサヴォイ・ホテルへ敬意を表しに行った。