轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
丁度そのとき、アパルトマンの廊下で電話のベルが鳴った。
電話は素子からだった。
「いやにおそいからどっかへ行っているのかと思った――どうした?」
「ちょっと――いろいろあるもんだから」
感情のわだかまりから急にぬけ出せない伸子の声は、うっかりして沈鬱だった。
「――相変らずなんだなア」
素子は、電話口で考えていたが、
「迎えに行こうか」
その思いつきに弾んだ調子だった。
「迎えに行けば、いくら何でも放免だろう」
「じゃ、そうして。来るときね、あのクリーム色の小さい鞄に、部屋着と顔を洗う道具を入れて来て――二人分――いい?」
あんまりおそくなるようだったら、ヴォージラールまでかえらずに、いっそここのブルヴァールのはずれで街路樹のかげに一つ小さいホテルがある、そこへでも泊って見るのもいい。伸子は、いくらか重苦しい雲にきれめの見えた思いで客室へ戻って来た。泰造がひとりで肱かけ椅子に残っていた。
「お母様は?」
「よこにでもなったんだろう。しばらくそのままにしておけ」
泰造は、拇指と小指とで、両方のこめかみのところを揉むようにしているのだった。
「頭痛がなさるの?」
「頭痛というほどじゃないが」