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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
二 フロイスと朝山日乗との衝突
それも惟政の尽力であった。惟政はまた目覚時計を信長に見せるためにフロイスを連れて行った。この三回目の会見は室内においてであった。信長は時計を見て驚いたが、構造が複雑で、自分が持っていても使えない、と云って受けなかった。そうしてフロイスに茶を振舞い、美濃の干柿を与えた。この時も二時間ほど話したが、信長は頻りにヨーロッパやインドのことを知ろうとした。そうして別れ際に、近々尾張へ帰るから出発前にもう一度来るがよい、その時は将軍訪問の時に着ていたポルトガル風の衣服を着けて来て貰いたいと云った。それはオルムズの緞子で作った短い大型の雨外套に金襴の装飾を附けたもの及び黒頭巾なのであった。
二 フロイスと朝山日乗との衝突
その出発の前日、一五六九年五月六日(永禄十二年四月二十日)フロイスは、ロレンソたちを伴い、シナの大型紅紙一束、蝋燭一包を携えて、別れの挨拶に信長を訪ねた。時は夕方で、面会を求める人々が大勢待っていたが、彼の来たことをきくと信長は直ちに引見し、彼の差出した蝋燭に自ら火を点じて手に持ちながら、例のポルトガル服はどうしたとたずねた。フロイスはこういう待遇を予期せず、その服を着てはいなかったが、念のために持参してはいた。