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ふれんぞくさつじんじけん
不連続殺人事件
「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页
あの頃は然し一馬は臆病だった。宇津木秋子は三宅木兵衛と共に去る。元々未練のない女とはいえ置き去られては心中暗澹、疎開客は終戦と共ににわかに去り、小六も胡蝶さんも去った。彼は孤独というものが何よりも自分の望む愛人のように、あの時はむしろ厳しい勇気にみちて、一同を見送り、孤独に閉じこもったように見えた。
ひと月ふた月に一度ぐらいずつ上京のたびに、世相の変転は彼の心に大きく影響して、去年の春ごろだか、今の奥さんのあやかさんに会った。あやかさんは女学生のころは詩などを作っていたそうで、主知派の異才歌川一馬といえば文学少女には相当魅力のある中堅詩人だから、そのころ三四度お友達と訪問したりなどしたことがある。然し詩はあやかさんには附焼刃で、実際は詩などに縁もゆかりもない人だ。だから女学校を卒業すると、もう一馬を訪れはしなかった。
去年再会したときに、あやかさんは土居光一という画家と同棲していた。彼の絵は最もユニックだと云われ、鬼才などともてはやされているが、私はそうは思わない。シュルレアリズム式の構図にもっぱら官能的な煽情一方のものをぬたくり燃えあがらせる、ちょっと見ると官能的と同時に何か陰鬱な詩情をたたえている趣きのあるのがミソで、然し実際は孤独とか虚無の厳しさは何一つない、彼はただ実に巧みな商人で、時代の嗜好