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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

四 第一の殺人

たいがい、差上げずに、すむでしょう。坂口安吾

四 第一の殺人

翌朝、七月十七日午前六時半、私たちは散歩にでた。三輪山と云って人里離れた山中にホコラがあり、三輪神社と称し、奈良朝頃からの由緒ある氏神の由だが、名残をとどめているのは大木の密林ばかり、ホコラはオモチャのように小さい。この三輪山中、ブナの密林にかこまれて周囲三町ぐらいの池があり、水の色の碧の深さ、ただならぬ妖怪じみた色をしており、主でも棲むという面魂、三輪の神様に結びついた伝説があって、水の涸れることがないそうだ。

このへんの風景は色彩の激しさと孤独の深さ、胸にしみる静寂を宿して、私にとってはこの村の最も大きな魅力であった。このへんを一まわりして、七時半の朝食に間に合うように戻ってきて、裏門をくぐって、酒倉にそって表門へ廻ろうとすると、猿又一つの海老塚医師が、裏庭の清水の流れにカラダをふいて、体操している。

「ヤア、ゆうべはお泊りでしたか」と言葉をかけると、ジロリと見ただけで、返事をしない。まったく、変人で、ひねくれている。小児マヒからのビッコで、裸になると両足の細さの相違がハッキリ分る。まるで我々全体に敵意をいだいているような様子で、我々が話しかけても返事もロクにしやしないが、そのくせ、山荘に文人連が泊って以来毎晩遊びにきて酒席の隅に息を殺している