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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

三 招かれざる客

歌川家へつくと、来客諸公は滝ツボへ水浴にでかけた由で、一馬とセムシの内海だけが私たちの到着を待っていた。

私は喋る力もない。一風呂あびると、ビールとサンドウィッチの中食をとり、目がとろとろ開かなくなって、部屋へ寝床をしいてもらって、寝こんでしまった。都会の暑熱に喘ぐ身に山の冷気は快適で、私が目をさましたときは、もう、たそがれていた。私の期待に一つ足りないものがあった。まだヒグラシがなかないのだ。月末には、なきだすだろう。顔を洗っていると、女中が迎えに来た。そこへ京子も迎えにきて、

「ようやく、お目ざめ。もう、みなさん、お酒めしあがってるわ」

「まったくグッスリねむったものだな」

私は大きなアクビをして、階下へ降りた。

三 招かれざる客

私は望月王仁が大の嫌いであった。尤も文壇で望月王仁が好きだという者はめったにない。才筆を鼻にかけて人を人とも思わない。礼儀作法を弁えず、人の面前で婦人に接吻はおろか、暴行強姦もやりかねない奴で、だから未だに独身で、天下の女はみんな俺の女のようなものだとうそぶいている。

けれども彼はジャーナリストに人望がある。それは奴が金ッぱなれがよいことと、ジャーナリズムは思想性よりも筆力で評価するから、彼の才筆に眩惑される。