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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

二十二 「八月九日 宿命の日」

この日の深夜には、約束の八月九日が始まるのだから、食堂にはアタピン女史が一日目玉を光らせてガンバッている。

みんな食堂に集っているが、空室ばかりの廊下にも八丁鼻とヨミスギが両端にガンバッている物々しい警戒ぶりなのである。

夕食にはカングリ警部も出席していた。

「八月八日、午後八時か。みんな八ですな。戦争中はスエヒロガリとかなんとかエンギをかついでいましたが、我々警察にとっては、スエヒロガリは何より困ったことですよ。この事件はまさしくスエヒロガリで、まったく、どうも、面目ない次第です」

そのとき、本署から電話がきた。それをきいて戻ってきたカングリ警部が、

「イヤハヤ、どうも、海老塚さんが、本署の保護室で、目下大演説をしているそうですがね。今夜、この家で大殺陣が展開される、これは神様の思召によるのだそうで、海老塚さんの魂も、今夜はこの家へくるそうで、もう今じぶん、どこか、このへんの隅に詰めているかも知れませんよ。それから、諸井琴路さんは県立病院へ入院しましたが、却々の重態で、あるいは絶望かも知れないということです。当局と致しましても、死なれては困る意味もありまして、八方手をつくして治療に当っているのですが、あの御婦人は、天下に稀な、驚くべき意志力をそなえた人だそうですよ。