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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

「これがその偽造の手紙だが、君の眼力にかかっちゃ、真相を見破ることはイト易いことだろう」

「とんでもない。僕なんか、とてもダメだな。へ、こっちが歌川先生の本当の筆蹟ですか。ウハ、おんなじじゃないですか。ウメエなア。本物と見分けがつかねえもの、たいしたもんですね」

だから巨勢博士は全然評判が悪い。その代り愛嬌があって、クリクリ可愛くて、御婦人に丁寧で、まったく凄味がないから、御婦人連には大もてで、

「巨勢さん、いい人いらっしゃるの?」

「え? ハア、おはずかしい次第で」

「つれてらっしゃればよかったのに。電報でよんであげなさいな」

「人見知りをしますんで。十七の可憐な少女ですから」

「あらあら、じゃアまだ、接吻もなさらないのね」

「それが、一度。なんです。彼女はマッカになって、しかし、怒らなかったです。ハア」

「それじゃアもう新婚旅行なさってもよろしいわ。さっそく、およびしましょうよ、ねえ」

「それが、ここのウチじゃア具合が悪いことがあって。洋食の食べ方を知らないものですから。ナイフとフォークを握ったことがなかったもんで、目下練習中なんです」

友一郎巡査にカンヅメにされているから、巨勢博士を慰みものにしてウップンをはらしている。