轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

「日光」1948(昭和23)年9月~1949(昭和24)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 页

青空文庫

窮鳥

窮鳥

寛永寺の森だった。暗さと、下草の茂りに、ふたりは幾たびも、夜露に転んだ。

夜風が捕手の声をなすのか、捕手の声が夜風をなすのか、恐怖に吹かれ、不安に狩りたてられ、逃げても逃げても、すぐうしろに、何かが迫っている気がした。

「お燕っ。どうしたの。こっちだよ。お燕――」

「おっ母さん。待ってえっ。……何かが、袂にからみ付いてしまッて」

性の善もない悪もない。この場合、このふたりには、ただ母と子の本能があるだけだった。

お袖は駈けもどって、茨にからまれたお燕の袂を、無性に引ッ張った。袂の八ツ口はやぶれた。おそらく、お袖の手の皮膚もやぶれて血に染まったろう。しかし、なんの痛さもおぼえない。

「しッかりおし。大丈夫かえ」

「おっ母さん、いったい、どうしたんでしょう、今夜の騒ぎは」

「まだ分らないのかえ。御隠殿下へ、手が廻ったにちがいないのさ。もうわたし達も、覚悟をしなけれやならないんだよ」

「そしてこれから、どこへ逃げてゆくつもり」

「さあ? ……」

お袖は、途方にくれた顔いろを、お燕に見せまいとするように、くちびるを噛みしめた。

「なあに、心配おしでない。大内不伝様は輪王寺の宮の御家来だから、その不伝様に頼んで、別院のどこかへ匿ってもらえば、町奉行でも寺社奉行でも、手を入れることはできやしない。