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やまのじんせい

山の人生

柳田 国男

山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页

青空文庫

二七 山人の通路のこと

口は黄金ですこぶる名瓢であったという。

仙人を見縊びるのは本意でないが、これくらいの仙人ならば、まだ山男にも勤まると思う。ただ鈴木氏の永年の恩誼は厚かったにしても、最後に人知れずその瓢をくくりつけて去ったという一点だけが、彼らのとうてい企てえまいと思うロマンチックであった。この地方の山人が里に親しみ、山で木小屋の労働者を驚かすに止らず、往々村人の家を訪ねて酒食を求め、村人もまたこれを尊敬していたことは、次のオオヒトの条下に確からしい一例を掲げる。そうするとこれもまた同化帰順の一段階であって、瓢箪のごときもじつはあまりに大きいので、何か手ごろの容器とただそっと取り替えて往ったのかとも考えられる。

二七 山人の通路のこと

今日のいわゆるアルプス連などは、どういう風にしているか知らぬが、猟師・木挽らのごとくたびたび山奥に野宿せねばならぬ人々は、久しい経験から地形に由って、不思議の多かりそうな場処を知って力めてこれを避けていた。おりおりこれは聴く話であるが、深山の谷で奥の行止まりになっているところは無事であるが、嶺が開けて背面の方へ通じている沢は、夜中に必ず怪事がある。