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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

席には、左馬介しかいなかった。作左衛門はこのとき初めて、まだ家中には誰にも洩らしていない報告を一つつけ加えた。

それは、信長が、いよいよ月の末二十九日に、安土を発向、京都に一泊して、直ちに西下するという日取の決定や準備の聞き込みであった。

きょうはすでに二十五日。

この二十九日には、信長が安土を立つと聞いては、光秀もさすがに、ここ七日間の逗留を顧みて、心をせかれずにはいられなかった。

「して、安土御本城のお留守居衆などの顔ぶれも決まったようか」

作左衛門はそれに答えて、

「お留守には津田源十郎どの、加藤兵庫どの、蒲生右兵衛大輔どの、野々村又右衛門どの、丸毛兵庫守どのなど、御本丸守り、二の丸詰の方々まで、数十将におさしずあらせられたように承りました」

聞き入る光秀の耳はその眸とともに、彼の聡明と観察の叡智を象徴していた。作左の一語一語にうなずきを与えながら、

「また、御発向のお供には」

と、たずねた。

「誰々と、いちいち審かには聞き及びませんが、左右の御近臣数名と、お小姓衆三、四十人ほどお召し連れとのみ伺いましたが」

「なに、ただ四、五十名の軽装で御上洛とか」