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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
「大阪朝日新聞」1924(大正13)年3月~5月<br>「女性」1924(大正13)年11月~1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 179,399 字 · 353 页
と、私を追い立てたりするのでした。
こう云う風にして見せるともなく折々ちらと見せられるナオミの肌の僅かな部分は、たとえば頸の周りとか、肘とか、脛とか、踵とか云う程の、ほんのちょっとした片鱗だけではありましたけれども、彼女の体が前よりも尚つややかに、憎いくらいに美しさを増していることは、私の眼には決して見逃せませんでした。私はしばしば想像の世界で、彼女の全身の衣を剥ぎ取り、その曲線を飽かずに眺め入ることを余儀なくされました。
「譲治さん、何をそんなに見ているの?」
と、彼女は或る時、私の方へ背中を向けて着換えながら云いました。
「お前の体つきを見ているんだよ、何だかこう、先より水々しくなったようだね」
「まあ、いやだ、―――レディーの体を見るもんじゃないわよ」
「見やしないけれど、着物の上からでも大概分るさ。先から出ッ臀だったけれど、この頃は又膨れて来たね」
「ええ、膨れたわ、だんだんお臀が大きくなるわ。だけども脚はすっきりして、大根のようじゃなくってよ」
「うん、脚は子供の時分から真っ直ぐだったね。立つとピタリと喰っ着いたけれど、今でもそうかね」
「ええ、喰っ着くわ」