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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
彼らの小屋では焚火のあかりで夜を過したが、ここには、これはこれは――と見あげる珍しいランプがともっていた。その輝きを煌々と感ずるだけでもほッと救われるのである。板のあい目や節穴から洩れる光線が、黒い闇のなかに角のように伸びているのも、見た目には心強いものであった。
ここは城中であり、邦夷の居室であった。親しみ深く、しかも厳粛な一廓であった。
人々は事ある毎にここに集った。おのれのことと彼らのこととは同じことであった。一たびは解体した一つの家中のうち、えらばれた彼らの一団の四十数名が再び結集したのであったから――みずからの意志は、取り囲んでいる中心の邦夷にすべてを任せていた。ささげた信頼は誠意となって酬われることを知っている。
今宵も集っていた。その気配を感ずると阿賀妻の心は子供のようにときめいた。彼のために集ったのかとさえ考えた。肥沃の地に対するあれほどの渇望を、今こそ――今日の今から医すことが出来るのだ。彼は足をはやめた。妻の姿は脳裡から消えていた。空腹さえうち忘れ得た。同じ思いで、同じ喜憂に包まれた一団でなければならない。
だが、すたすたとやって来た阿賀妻は何かに衝き当ったように、ふいに立ちどまった。