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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
はもう古くなったからのう、兵部省はごたごたしとるし、金もなし、そこでわれらが買い取っておいた、予定の屯田兵のためこれを厳重に保管して貰いたい、そうして、だ、屯田兵士の編制の成るまで、おぬしはカラフトの統治に専念して貰う、もっぱらロ国の軍政並びにかの国のカザック兵制度に就き調査研究をとげること、よろしいか――すべてはそれからのこと」
どうだ?――という風に、黒田の眼が柔かく彼を見つめていた。その瞬きごとに、堀の胸にあった不満や憤りが吸い取られてしまうのだ。堀はぞッと身ぶるいした。憑かれたものがどさッ、どさッと音立て肩から堕ちた――そんな顔になっていた。
翌日彼は正五位監事に補せられ月俸百円を給せられた。
十一月にはケプロンの第一次報告が成文になった。むろん、政府も、開拓使さえも、深くは蝦夷地を知らないのだ。従って方針に附加も削除もない。
そこへ阿賀妻は開拓使貫属の資格でやって来た。
――下総の松戸が道中の泊り納めであった。――そこまでは急いで来た。そこからは、平野のま近に、目と鼻との間に東京があって、阿賀妻の心は何故か重くなるのであった。今回の旅は、まことに、甚助の云うように、めぐまれたものであった。