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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

生れたての嬰児や隠居した老人などとも同じ単位によって登録されていた。この程度で納得したが身のためであろうと人も云い、自分もそれはそうだと感じてはいた。いずれはこういうことになるであろうとは考えていないわけでもなかった。廃藩置県の布告を耳に入れたとき、それは彼と邦夷の胸に通じていた想念であったとも云える。

それだけではない――その通りに観念していたような邦夷の心が、彼の胸に照りかえし、それが阿賀妻にはたまらないのだ。ことの成り行きを仔細に書き送って甚助に持たせてやった書状に対し、邦夷は短かく「委細承知」と返して来た。「万事一任、何事も時のさだめ」そして別行に書き足して、「短慮被成まじきこと」――呼吸せき切って駈けもどった甚助の前で、その従僕の前もかまわず、彼は最後の一行にむせび泣いたのであった。

はじめは、彼らの献策によって動いていた邦夷が、今では、逆に阿賀妻をひきずっている。十代に及ぶ永いあいだ、辺境の古びた城に静かに、沈積していた藩主の心が動きだした。

阿賀妻は甚助の口から国許の模様を聞き取った。少しずつ移住の賛成者も殖えているらしく思われた。