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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
と書をたてまつった。こうして、人々の注意がこちら側に向いて来た。間もなく行動に移ろうとしたとき、しかし、彼方には政権のうつり変りが行われた。不満なものの動乱がつづいた。そして、勝ったものは支配者であり、同時に、敗れたものは居たたまらなくされたのだ。あるいは脱れてやって来るものが踵を接するようになった。
川は吼りをたてて流れていた。
「ようやく来ましたぜ」と案内人は叫んだ。
「これがあなた、イシカリ川、しかし――」
「ほう――」と玉目三郎は立ちどまった。
水は押しあいへしあい盛りあがっていた。自然の堤防である足もとの笹やぶも半分は水に蔽われていた。その中に生えたニワトコの二三本が、赤い実を泥水によごしてふるえている。ここまで目あてにして来たヤナギの木群れは、そびえた梢でおんおんと呻いていた。その樹間にある草小屋には案のじょう人の気もなかった。一つの幹につながれた丸木舟がたかく浮きあげられていた。
「舟はある」
「そうですよ、あるにはありますが」と、案内人も立ちすくむのであった。
「どうした?」
「この水ですからのう」
彼は、見あげるように増水した川を眺めて考えていた。