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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
一方に、彼らのうっとりするようなよろこびがあって、他方にこの犠牲があった。それを見ているとしみじみした。
「松岡どののお帰りがあればこのものは片付くというもの、それまで――」
そして彼らは待つのであった。だが今は話題があった。曠野の陽も急に温かになったような気がした。伐りひろげた努力の甲斐も見えて来た。夜になっても賑やかであった。ここに、不日――近々のうちに、彼ら自身が、そのあるじとなって、村がうち樹てられる。その万端の支度をととのえて、主君邦夷が近づきつつある。蒸気船は必要なものを満載してこちらに向き、青い海を今や一散に※りつつある――
「すると、おなごどもは、まだ何も存ぜぬわけか」
奥の方にいた一人は横のものにそう囁いた。
「つまり、そういうわけ」
「早う知らせてやりたい」
「はッはッ」
笑いごえは高かった。そのうしろにいたのが最初のものの肩をとんと叩いて云った。
「そればかりでもあるまい――」
「うっふ、ふ」と、むせるようにそれは笑った。
「明日はいやでもご帰館じゃ」
第二のものがそれに和した。
「今宵いち夜のご辛抱――」
ぼッと焔があがった。彼らも赤く照し出された。