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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

「なかなかよき眺めではござらぬか」と阿賀妻は云った。

大野順平はにたりと笑っただけであった。

そして、彼らは、歩幅と綱によって測った地相を書きこんで行った。出来あがった見取図には主君の館がひとりでに中心になっていた。土地は身分の順序に割り当てていた。阿賀妻はそれをひろげて当路者に差し出していた。

「これでござる」と彼は云った。

「ふーん」と大主典はうなってそれを見つめた。一点一画にそこの状態を空想している風であった。太く呼吸を入れ頬杖をついて眺め入るのである。

「図示しましたその枝川がトウベツ川の本流と合する地点に年古りたる水松が屹立いたし、そこを基点として――」と阿賀妻は説明した。そこから見た景色が最も郷里を髣髴させたとは云い得なかったが、「右岸に沿うてほぼ南北、支流に沿うて東西に道路を穿ちましょう、それらの交通路に面して、各戸に割りあてる地積は、間口四十間の奥行百間、この反別は一戸当り一町三反三畝余となし――」

「狭い――!」

役人は叱咤するように、舌打ちするようにそう云った。

「左様――しかし」と阿賀妻も低い声にすべての神経を集めて云った、「先ずわれらの移民は、郷里の密集生活に馴れたものでありますから、その訓練のはじめとしてはせめてこれくらいのものにしないと――なおまた、おいおい耕地の不足を来すことは明らか