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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
「どう致しましょう」
崖の下にその男を追いつめていた玉目三郎は、阿賀妻をふりかえってそう云った。星明りに彼の瞳が白く光った。指示を受けるように、彼がどうしましょうとたずねることは、この曖昧な男の成敗を意味していた。一図に彼は思うのだ――大切な彼らの一両日を踏みにじってしまった、と。それはまた彼の若い心に消えていない硬論のなごりでもあった。思いは他の三人の胸にも通じていた。それを喰いとめて、た易くは爆発させ得ない年齢の垣が出来ていたに過ぎない。むしろ、同じ思いを胸にひそめて、ふきあげる激しい意志をこのような未開の地に捻じ向けたのである。主家の安泰ということが第一であった。
その理屈が判らぬ玉目三郎でもなかった。主家の安全のなかには、おのれ自身の安全も含まれていたからである。おのれの主君とは一つの囲いの中に棲んでいた。殊にそれが、先祖の位牌を譲り受けた戸主にとっては退引ならぬきずなであった。
「放っときなされ」と戸田老人が低く云った。大野順平も笑って云った。
「むしろ刀の錆でござろう、われらの斬らなければならぬものはこんなものではありませなんだ」
「人夫ども!」