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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
蜂谷は、自身としてそのどちらにも加担しないまま、蒋介石も中共も、それぞれのものとして認めようとする態度でいる。蜂谷良作の表情を見ると、そのどっちつかずの曖昧さも、用心ぶかさや狡猾さから出ているというよりも、彼として、ほんとにそうとしか考えられないありのままを、云っていることが感じられたのだった。
それから足かけ三年がたった。きょうパリでピスカトールの舞台を見ながら伸子にその意味をきかれ、はっきり答えられなくて素子につっこまれた蜂谷良作の困ったような顔つきは、パリでの一年半の生活が、蜂谷良作をより器用な人物に変化させていないことを告げた。教授という肩書のない現在の蜂谷は、かえって元より精神の柔かい部分――未完成なところをむき出しているようでもある。それが、伸子にも素子にも、蜂谷の気やすさとして、感じられているのだった。
十一時半ごろ芝居がはねた。三人は、うすら淋しい場末の夜の、アヴェニュー・ジャン・ジョレスから賑やかなサン・ミシェルの大通りまで戻って来て、とあるカフェーのテラスで休んだ。
ベルリンで見た「三文オペラ」の舞台と比較して、素子がしきりにピスカトールの芝居の批評をした。