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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
その限度はきわめて微妙で、またうち破りにくいものだった。
伸子は、知識欲に燃えるような顔つきになって、
「あなたのお話を伺えてうれしいわ」
と云った。
「それで――?」
「いや、別に、それで、どういうような卓見があるわけじゃありませんがね」
比田礼二は、それももちまえの一つであるらしい一種の自分を韜晦した口調で云った。
「――革命で社会主義そのものが完成されたなんかと思ったらとんでもないことさ――ロシアでだって、やっと社会主義への可能、その条件が獲得されたというだけなんです。しかも、その条件たるや、どうして、お手飼いの狆ころみたいに、一旦獲得されたからって、その階級の手の上にじっと抱かれているような殊勝な奴じゃありませんからね」
それは、伸子にもおぼろげにわかることだった。ドン・バスの事件一つをとりあげても、比田礼二のはなしの意味が実証されている。
「これだけのことを、日本語できかして下すったのは、ほんとに大したことだわ」
伸子は、友情をあらわして、比田に礼を云った。
「わたしはここへ来て、随分いろいろ感じているんです。つよく感じてもいるの――」
もっともっと、こういう話をきかせてほしい。