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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
少くともわたしたちはね、その二つのもののたたかいを、犬のかみ合いを見物しているようには見ていないんです」
「犬のかみ合いは、ひどい」
「だって、ただ、どっちがつよいか、どっちが勝つかなんていうところからだけ見ているなら、結局、闘犬見物みたいなもんですよ。――闘犬にだって、ひいきはあるでしょう、かたせたい側っていうものが……」
男の友人たちとの間で話が議論めいて来ると、ぐいぐいつっこんでゆくのは、いつも素子だった。伸子は、蜂谷のいうことのうちに感じとられる真実と、そこにまじって現れている彼の傍観的な立場とを、だまって考えあわせるのだった。
「さあ、そろそろ、ひっこみましょうか」
そう云って自分のかけていた椅子を部屋のなかへもちこむ素子に、つづいて椅子を運びながら蜂谷は、
「それにしても、あなたがたは、かわったもんだなあ」
と云った。素子は、そういう批評が不満足ではないらしく、その感情を、からかうような眼つきの中に示して、
「あなたはどうなんです」
蜂谷は、それに答えなかった。素子に案内されて、向いの部屋へ去るとき、
「あなたがたが、ロンドンから帰って来たらいっぺん是非サン・ドニへ行って見ましょう」