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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

従って閉鎖することに決定されたんです。

伸子は、セットルメントの仕事で世界に知られているトインビー・ホールを訪問して、そこの労働者大学の課目を帳面に写してもっていた。夏のつたが青々とした大きい葉をからましている由緒のふるい掲示板には、九月末からはじまる新学期の課目がはり出されていた。経済、文学、歴史、英・仏・独語。劇。雄弁術、音楽、美術、民族舞踊、応急看護法。一科目五シリング、と。

この科目のどこに、労働者が自分たちの階級の意義を自覚するために必要な勉強がふくまれているだろう。トインビー・ホールの内部を参観して帰りぎわに、もう一遍掲示板を眺めたとき、伸子の不同意は反撥にまで高められた。トインビー・ホールでは、労働者学生の食堂は天井の低い、窓が床に近いところに切られている薄暗い中二階のなかだった。うす暗い中に、むき出しの木のテーブルとベンチがあって、錫の茶のみコップがずらりと並んでいた。どこか中世の職人部屋の感じがただよい、そこを見てから、しばらく廊下を行って伸子が案内された指導者たちの食堂は、あんまり学生の食堂との相違がはげしくて伸子をおどろかせた。