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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
前後では三ヵ月もいることになるのに、ちゃんと新聞もよめないままにパリを去る――それでは困ると思うのだった。
伸子は、パリへついて二日目に「モンソー・エ・トカヴィユ」に寝るためと勉強のための室をとり、その次の日、クリシーの先のアトリエに住んでいる画家の風間夫妻を訪ねて、フランス語の女教師を紹介してもらった。泰造たちとマルセーユまで同じ船にのり合わせて来た風間夫妻が、便利なフランス語の出教授をうけているそうだと泰造からきいたのだった。
はじめてマダム・ラゴンデールというその女教師が来て、一週二回の授業のうち合わせをしてかえったあと、伸子はしばらくぼんやりして、勉強室であるその屋根裏部屋のディヴァン・ベッドに腰かけていた。質素な身なりだけれども、どこともしれずあかぬけしていて、生活のためにたたかっているパリの、中年をこした女の柔かい鋭さをたたえているマダム・ラゴンデール。彼女が、大使館関係の夫人たちも教えているということや、英語を話すことなどを、伸子は会ってはじめて知った。自分の知っている日本婦人は、みんな実に親切な人たちばかりだと力をこめて云うマダム・ラゴンデール。