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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「とどけさせるの?」
伸子がきくと、
「もてますでしょう、看護婦さんがいますし、どうせタクシーですから……」
軽いけれども嵩ばるカバンを両手に下げて、須美子は、やっときょうの買物の予定はすんだ、という表情になった。伸子たちはプランタンのなかの食堂で、あまりおいしくもない昼食をすました。そして、十四日の午後二時に須美子のデュトのうちへ行く約束をして、百貨店の前からタクシーにのった須美子の一行とわかれた。佐々の両親がパリを立つのもいずれ月末のことになっているし、双方の出発の日がせまらないうちに、伸子は須美子のために小さい計画を思いついたのだった。
八
今夜からは、両親のいないペレールの家の寝室につや子とねることになった。そこへ入って行ったとき、伸子は、何となしはじめて案内されたホテルの室でも見まわす時のような視線で、古風にどっしりとした室内を眺めた。
このアパルトマンの四つの部屋のうち、伸子にとっていちばんなじみのないのが、両親の寝室であった。片隅に重々しく衣裳箪笥が立っていて、窓よりの壁の前では、化粧台の鏡の面に電燈に照し出されて室内の一部が映っている。