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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

けれども、何かにつけて冷酷だという多計代の非難に伸子がけっして承服していないように、つや子は、自分が多計代から石のような子だ、と云われるたびに、そうじゃあないのに、という悲しさは感じているだろう。

スタンドを消そうとするとき、つや子は、

「お姉さま、いい? あしたの朝は、このひとがコーヒーこしらえてあげる、よびに来るまで起きないで。いい?」

そう云って、ベッドの上で弾むようにねがえりをうってあちら向きになった。

九

姉と二人きりになったつや子のくつろぎかたは、ほんものだった。

おかっぱの髪の上に、指をくみ合わせた両手をのせて、短いスカートをふるようにしながら部屋から部屋へぶらぶら歩きまわったり、ヴェランダによりかかって飽きずに外を見ていたり、そうかと思うと、いきなり、

「ねえ、お姉さま、このひと、帰ったってもうあんな学校へなんか行きゃしないから!」

誓うように云ったりした。

「フランスでも姉妹って、意地わる?」

こんど親たちにつれられて旅行に出るまで、つや子は東京にある三種類の尼僧女学校の一つに通っていた。その学校の在る通りが、泰造が事務所へ行く通路に当っていた。