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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
『むくつけき小羊』にはもったいないと思ったのかもしれない」
悄気ていたつや子が笑いだした。「むくつけき小羊」というのは、和一郎が小枝の気をそこなうようなことをしたとき、小枝の前で自分をせめ、へりくだる言葉として使ったのがはじまりで、家族の若いものたちの間にはやっているのだった。
親たちが留守になっても、マダム・ルセールは通って来て、伸子とつや子のために食事の仕度をしているのだったが、伸子は、いつとはなしに、献立がかわって来ているのに心づいた。おいしい小粒青豆がひっこんで、ふと気がついたとき皿に出ているのは、ありふれたさや豆だった。前菜からサーディンやソーセージという類のものが消えた。伸子は、僅かの間のことはそれでもいいという気だった。その分だけをマダム・ルセールとその家族が食べているなら、結局無駄ではないのだから。マダム・ルセールが通って来て働くようになってから、泰造は一日およそいくらと見つもって、三日分ほどずつまとまった金を、マダム・ルセールに自分でわたしていた。そして、精算書を出させていた。マダム・ルセールの計算書は、肉類いくら、野菜いくら、という風に金額でかかれていて、何の肉をどれだけという分量は記入されなかった。