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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

彼らがすっかり搾りあげられてしまっていることは周知であるから。

フォード自動車がやすくなるのは、フォードにくっついて生きている何万人という販売者たちの手数料が二〇パーセントから一七・五パーセントに切下げられたからであった。たとえば二五ドルやすくなったフォード一台について、手数料のやすくなった販売者たちの負担はその二五ドルのうち一七ドル半。フォード会社はただの七ドル半を背負うにすぎない。販売者たちの負担で、これまでより貧しくなった人々の財布から、フォードはこれまでよりも儲けようとしているのだった。十一月に入ると失業者は四十万人を越した。

「これらすべてのことは何を告げるか? 世界市場の争奪は一層はげしくなるであろう。それは、とりも直さず、第二次世界戦争の危機を増大するであろう」

――三十日の晩、ベルネのうちでの会話にしろ、「リュマニテ」が告げているこれらの事実にしろ、蜂谷良作のたすけなしには言葉の不自由な伸子にわかることでなかった。

伸子の夕食前の散歩は、少しずつ時間を早められた。クラマールの畑の道を森へ歩きながら、ある午後はサン・クルーの通りから、蜂谷の住居のあるサン・トアンのしずかな通りを通りぬけ、また戻って来て、妙に空屋のような感じのするその家の二階の、蜂谷の質素な部屋で話したりした。