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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

組合の用事で地方よりモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ派遣されて来る人々のための室だった。

三人の用がすむのを待って、伸子は事務室の木の長椅子から立って行った。

事務員は、伸子を見た。そして、だまって頭をふり、目の前に開いてある室割りの大帳簿の上で右の手のひらをひろげて見せた。御覧のとおりという、しぐさであった。満員だというのは、ほんとうに室そのものがいっぱいなのだ。八分どおりまでそのことが明瞭になった。伸子は、むしろ陽気になった。

「じゃ、いいです。こわがらないで下さい。あした来ましょう」

伸子は、日課にしてパッサージへ通った。五ヵ年計画は首府であるモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)とソヴェト同盟各地方の活動とを一層緊密にした。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)への用事をもった旅行者が急にふえている。

「これが、わたしたちへの五ヵ年計画だったっていうわけね」

大国営農場ギガントの広大な美しい写真を眺めたり、富農からの没収品目を新聞でよんで、五ヵ年計画の奮闘に触れているように感じていた自分たち――少くとも自分というものを、伸子は段々自分の責任において批評し、滑稽を感じて笑えるようになって来た。